中小企業の社長さん必見!平成30年度の税制改正!~法人課税編~

デフレ脱却と経済再生に向け、生産性向上のための設備投資と持続的な賃上げを強力に後押しする観点から、賃上げや国内投資に積極的な企業の税負担を軽減するとともに、賃上げや国内投資に消極的な企業に係る租税特別措置の適用要件の見直しが行われました。

 

要するに、設備投資や賃上げを行う会社に対して、見返りとして税金の面を軽減します、ということです。

 

(1) 賃上げ及び投資の促進に係る税制(所得拡大促進税制の改組)

・生産性向上のための国内設備投資や人材投資、持続的な賃上げを促す観点から、十分な賃上げや設備投資を行った企業について、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができる措置が講じられました。

 

・リカレント教育(注1)など、人材投資を増加した企業に対しては、税額控除率が上乗せされます。

(注1)リカレント教育とは、誰にとっても「いつでも学び直し・やり直しが出来る社会」を作るため、幾つになっても、誰にでも学び直しと新しいチャレンジの機会を確保する教育のことを言います。 出所:経済産業省産業人材育成室資料

 

【A 要件】

① 賃金:継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率≧3%

② 投資:国内設備投資額≧当期の減価償却費の総額の9割

③ 教育訓練:当期の教育訓練費≧前期・前々期の教育訓練費の平均の1.2倍

 

【B 措置】

①及び②を満たした場合)

給与等支給総額の対前年度増加額×15%の税額控除(上限は法人税額の20%)

①、②及び③を満たした場合)

給与等支給総額の対前年度増加額×20%の税額控除(上限は法人税額の20%)

 

『ワンポイント』

・平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する事業年度において適用されます。

 

・中小企業における措置については、下記(2)を参照

 

(2) 中小企業における賃上げの促進に係る税制(中小企業における所得拡大促進税制の改組)

・中小企業における持続的な賃上げを促す観点から、賃上げ金額の一定割合の税額控除が出来る措置が講じられました。

・さらに、高い賃上げを行い、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、税額控除率が上乗せされます。

 

【A 要件】

① 賃金:継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率≧1.5%

② 賃金・教育訓練:継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率≧2.5%

かつ、

教育訓練費増加等の要件(注2)を満たす場合

 

(注2)教育訓練費増加等の要件とは、次のいずれかの要件をいう

a 当期の教育訓練費≧前期の教育訓練費の1.1倍

b 中小企業等経営強化法の認定に係る経営力向上計画に記載された経営力向上が確実に行われたことの証明

 

【B 措置】

①を満たした場合)

給与等支給総額の対前年度増加額×15%の税額控除(上限は法人税額の20%)

②を満たした場合)

給与等支給総額の対前年度増加額×25%の税額控除(上限は法人税額の20%)

 

『ワンポイント』

・ 平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する事業年度において適用されます。

 

(3)情報連携等の促進に係る税制

企業の内外における連携・高度利活用する事等により生産性の向上を図る等、「生産性向上特別措置法(案)」の要件を満たすものとして認定された計画に基づく投資の促進に係る税制(特別償却又は税額控除)が創設されました。

 

【A 要件】

① 投資:企業内外データの連携・高度利活用による生産性向上等、「生産性向上特別措置法」の要件を満たすものとして認定された計画に基づく投資(ソフトウェア、器具備品、機械装置)

② 賃金:継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率≧3%

 

【B 措置】

・①及び②を満たした場合

投資額の5%の税額控除又は30%の特別償却(税額控除額の上限は法人税額の20%)

・①のみを満たした場合

投資額の3%の税額控除又は30%の特別償却(税額控除額の上限は法人税額の15%)

 

『ワンポイント』

・ 生産性向上特別措置法(案)の施工の日から平成33年3月31日までの間に取得等をする設備について適用されます。

・ 最低投資合計額は5,000万円となります。

 

(4)租税特別措置の適用要件の見直し

所得が増加している(当期の所得金額>前期の所得金額)にもかかわらず、賃上げと国内設備投資のいずれもほとんど行わない(継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率≦0%かつ国内設備投資額≦当期の減価償却費の総額の1割)

大企業については、「研究開発税制」等の租税特別措置の一部について、その適用をしない事とされました。

 

【要件】

大企業が次のいずれにも該当しない場合

① 継続雇用者給与等支給額が前事業年度を超えること

② 国内設備投資額が当期の減価償却費の総額の1割を超えること

※ 当期の所得金額が前期の所得金額以下の場合には対象外とする。

 

【措置】

研究開発税制その他一定の税額控除(注3)の規定を適用しない。

(注3)対象となる税額控除:生産革命との関連が強い、賃上げ・投資に係る法人税の特別措置但し、特定の地域・業種を対象とする措置、中小企業を対象とする措置等は除く。

 

『ワンポイント』

・ 平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する事業年度において適用されます。

 

(5)特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る所得の計算の特例の創設

産業競争力強化法の改正を前提に、ベンチャー企業などが自社外の経営資源や技術を積極的に取り込むよう促し、我が国企業の生産性を高める観点から、特別事業再編計画の認定を受けた事業者が行った特別事業再編(自己株式を対価とした公開買付けなどの任意の株式の取得)による株式の交換について、その交換に応じた株主に対する譲渡損益に係る課税を繰り延べます。

 

『ワンポイント』

産業競争力強化法等の一部を改正する法律(案)の施行の日から適用されます。

 

(6)地方拠点強化税制の見直し

地域再生法の改正を前提に、東京から地方への移転を促す観点から設けられた、地方拠点強化税制について、東京23区から中部圏中心部や近畿圏中心部への本社の移転に対しても対象とするなどの見直しが行われます。

 

 

『おわりに』

今回は法人税がメインのため、社長さんに読んで頂きたい項目となりますが、今後、法人成りを考慮されている個人事業主の方も参照できるのではないでしょうか。

 

【税理士法人ティグレパートナーズ 税理士 大星 將博】

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