同族会社と相続財産

相続税の申告において、忘れがちなものが、同族会社に対する株式と貸付金です。我々のほとんどのお客さまは、非上場の会社であり、その経営も家族等の同族で行われているケースがほとんどです。といっても、株式会社であれば、そのしくみは株式を上場している会社でも、非上場の同族会社でも同じです。すなわち、株式会社へ株主が出資し、それを元手に会社は経営していきます。そして、会社に利益が出れば、配当という形で株主へ分配されます。また、株主は所有する株式を売却して、その値上がり分を手にすることもできます。

 

ただ、大半の非上場同族会社の経営は、個人事業に限りなく近い感覚でされているのが実情のように思います。というのが、非上場同族会社の場合、上場会社と異なり、株主は同族で構成され、その売却も難しいのが一般的だからです。

 

しかし、株式会社というのは、会社と株主は「別人格」であるとして、切り離して考えます。ですから、株主はその会社の株式を所有しているのであり、亡くなれば、当然相続財産となり相続税の計算対象となります。

 

「いやー、株式はあるけれども、こんな会社の株式なんて価値ないさ」このように言われる方も多くおられます。では同族会社の株式の価額はというと、端的には、元々出資した価額に利益の蓄積分を加えた価額となります。例えば、会社設立時に1,000万円出資し、10年間で500万円利益を出したとすれば、その株式は1,000万円から1,500万円(1,000万円+500万円)へ値上がりしているということになります。

 

株式というと上場株式という感覚が一般的です。しかし、同族会社の株式も立派な株式であり、値上がりしているというケースは実は多いのです。

 

また、会社によっては、代表者の方が会社へ資金を貸し付ける場合も少なくありません。この金額は会社の決算書に「借入金」として計上されています。これについても、代表者の方は、会社をご自身の個人事業という感覚から貸付けている意識が希薄です。しかし、代表者の方が会社に貸付けているのです。この貸付金(会社からすれば借入金)も相続財産となります。

 

会社を経営されている方は、ぜひご注意ください。

 

(税理士法人ティグレパートナーズ東京 税理士 中村哲平)

 

 

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