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私たちの身近にある老化現象の一つに、多くの人が抱えていながら意外と知られていない「大腸憩室」があります。そこに炎症が起きるのが「大腸憩室炎」で高齢者に多い病気ですが、若年層でも発症します。激しい腹痛を伴う場合は、早期の受診が重要です。大腸憩室炎• 食生活… • 嗜好品…• その他…「大腸憩けいつ室し」とは、大腸壁の一部がエクボのように外側に袋状に飛び出した状態を指します。これは加齢による腸の老化現象の一つで、病気ではありません。特に65歳以上では約半数に見られ、血管が通るなどの構造的に弱い箇所にできやすいとされています。1つだけでなく、複数存在するケースも珍しくありません。この憩室に便などが詰まり、炎症を起こすことで「大腸憩室炎」が発症します。大腸に憩室を持つ人のうち、10~20%が憩室炎を起こすと言われています。主な症状は腹痛と発熱で、便秘や下痢が続くなど、便通異常を伴うこともあります。これらの症状は、虫垂炎や大腸がん、虚血性腸炎など、他の病気でも見られるため、自己判断は危険です。腹痛や発熱が1~2日経っても治まらない、あるいは急激に悪化するような場合には、速やかに医療機関を受診してください。まれにですが、憩室から出血して命に関わるケースもあります。治療法は症状の程度によって異なります。軽度であれば、抗生物質の内服や水分補給、食物繊維を控えた低てい残ざん渣さし食ょくで自宅療養が可能です。一方、重度の場合は入院して絶食・点滴治療を行い、必要に応じて抗生物質の投与を行います。同じ箇所で炎症を繰り返す場合や、膿が溜まって重症化した場合は外科的手術が必要になることもあります。憩室自体は加齢が大きな要因ですが、憩室炎の発症には生活習慣が深く関わっていると言われています。主な原因として、以下の点が挙げられます。食物繊維の少ない食事、高脂肪・高赤肉食(西洋型の食事)喫煙、過度な飲酒便秘や排便時のいきみ、肥満など日常的にできる予防策としては、野菜や豆類などを含む高繊維質・低脂肪のバランスの取れた食生活、十分な水分摂取、適度な運動などの便秘対策、禁煙・節酒など、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。特に、喫煙が憩室炎の重症化リスクを高める報告件数は多数知られています。(喫煙は憩室炎発症のリスクではないが、重症化のリスクとされます)気ではありませんが、あらかじめ自分に憩室があると分かっていれば、腹痛などで受診した際に医師へ伝えることで、診断や治療がよりスムーズに行われる可能性があります。にでも起こりうる「腸の老化」に伴う炎症です。特に65歳以上の方は日頃の生活習慣を見直し、お腹の不調が続く場合は早めにかかりつけ医に相談しましょう。大腸に憩室があること自体は病大腸憩室炎は、年齢とともに誰遠藤 俊吾 先生福島県立医科大学会津医療センター(福島県会津若松市)14第26回健健康康相相談談室室誰にでも起こり得る誰にでも起こり得る腸の“老化現象”が原因です。腸の“老化現象”が原因です。

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