石材店が始めたチョコレート工房カカオ豆専用の石臼開発からスタート「佐藤先生がカカオ豆専用の石臼を「石挽カカオissai(いっさい)」は、墓石などを製造する井上石材有限会社(岡山県小田郡矢掛町)が始めたチョコレート工房だ。石材店とチョコレートの縁を取り持ったのは、広島大学名誉教授でカカオ研究の大家、佐藤清隆氏。話は2015年に遡る。作れるところを探していて、井上石材にたどり着きました。聞けば、原産地ではもともとカカオ豆を石で挽いていたそうで、佐藤先生はそれをどうしても再現したいと思われたようです」と話すのは、issaiを運営するイシヤマユウエン合同会社代表社員の松村晃泰さん。依頼があってから2年がかりでカカオ豆専用石臼は完成した。「井上石材の井上社長は、それまでチョコレートが苦手で、食べると顔にすぐ吹き出物が出ることを嫌がっていました。ところが石臼で挽いたカカオ豆から作ったチョコレートを食べてみると、おいしい上に、添加物を一切加えずに作っているため健康に影響を与える心配もありませんでした。そこで、誰もが安心して食べていただけるチョコレートなら、自分たちで作って売ってみようと考えました」。こうして、井上社長と松村さんら3人で2017年11月、チョコレート専門店の会社「イシヤマユウエン」を立ち上げた。実は、松村さんはもともと井上石材から石を仕入れ、アート作品を制作していた彫刻家だ。「石臼の開発が始まった頃に妻の転勤で京都から岡山に引っ越してきました。井上社長とは岡山で石の彫刻のイベントを共同で企画するなど親交を深めていきました。そこでチョコレートの店を一緒にやらないかと声をかけてもらったのです」。第1号店は2019年4月、井上石材がある矢掛町の古い建物をリノベーションしてオープンした。矢掛町は、旧山陽道の矢掛宿の古い町並みが残る観光地で、1号店は、観光客の立ち寄りスポットとしても人気を呼んだ。石挽きチョコレートについて熱く語る松村さん代表社員 松村 晃泰さん イシヤマユウエン合同会社22東京岡山
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