元気になったり、気分が沈んだりすることは誰にでもありますが、その程度によっては本人も周囲も気づきにくい心の病気が潜んでいる可能性があります。繰り返す「気分の波」に気づいたら、専門医へ相談しましょう。双極性障害高いと考えられています。I型、II型いずれも「抑うつ状態」の方が起こる回数が多く、かつ長くなる傾向があります。「躁状態」や「軽躁状態」の時は気分が高揚し、活動性が増しますが、同時にイライラや怒りっぽさも見られます。また、睡眠時間が短くても平気で、考えが次々と浮かんで行動を抑えづらくなります。時には、多額の浪費やギャンブル、過剰な性的活動など、衝動的で後悔を招くような行動をとってしまうこともあり、これが「抑うつ状態」に転じた後の悪化要因になることもあります。特に見過ごされやすいのは「軽躁状態」です。本人も周囲も「調子が良いだけ」と思い、症状として認識されにくい傾向があります。多くの場合、本人が長引くつらさを強く自覚する「抑うつ状態」を訴えて医療機関を受診するため、うつ病と誤診されるケースが少なくありません。また、「抑うつ状態」と「躁状態」の症状が同時に表れる「混合状態」が起こることもあります。活動性は高いのに気分は落ち込んでいるといった複雑な状態となり、衝動的な行動につながりやすく、自死のリスクが高まる時期と言えます。「双極性障害」の明確な原因は解明されていませんが、遺伝的な要因に加え、ストレスや身体の健康状態などが引き金となって発症すると考えられています。治療の柱は薬物療法であり、特に気分安定薬が中心的に使用されます。標準的な抗うつ薬は一般に効果が乏しく、「躁状態」を誘発(躁転)させるリスクがあるため使用すべきではないという考え方が主流となっています。薬物療法に加えて欠かせないのが心理教育です。患者自身やそのご家族が病気の性質などについて正しく理解し、気分の波やその変化に気づき、生活を送る上での工夫や行動パ「双極性障害」は、気分がひどく落ち込む「抑うつ状態」と、気分が異常に高揚して活動的になる「躁状態」という、両極端な2つの状態(気分エピソード)を繰り返す精神疾患です。症状のない健やかな状態(寛解期)に戻ることもありますが再発しやすく、気分エピソードを繰り返すことで、日常生活や人間関係、仕事や学業などの社会生活に支障をきたしやすくなります。また、自死される方の多さも深刻な課題となっています。「双極性障害」の精神症状は、気分、思考、意欲・行動面などに表れます。近年では、「躁状態」の重症度により「双極Ⅰ型障害」と「双極Ⅱ型障害」に分けて診断されるようになりました。双極I型障害:比較的激しい「躁状態」が出現し、有病率は人口100人当たり1人程度と推定されています。双極II型障害: 「軽躁状態」を経験するタイプで、I型よりも有病率がターンを変容させることなどで、再発のリスクを減らすことも可能です。「いつもより調子が良く、頭が冴え過ぎているから休みを取ろう」「睡眠時間が短くなっても平気になってきたから早めに相談しよう」など、再発パターンに気づき対処できるようになることが重要です。「双極性障害」の治療目標は、単に「躁状態」と「抑うつ状態」それぞれの症状を改善させるだけでなく、“気分の波”の再出現を防ぎ、寛解期を維持することです。病気や治療に関する正確な知識を持って、自身の波の出現パターンを理解して適切な対処法を身につけること、そして周囲の理解とサポートを得ることも、安定した日常生活と社会生活を維持する助けとなるでしょう。 関口 隆一先生新狭山かえでクリニック(埼玉県狭山市)第25回16健健康康相相談談室室“気分の波”に気づき、“気分の波”に気づき、再発防止に努めましょう再発防止に努めましょう
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