社員数は20人までが効率が良い200万個以上売れた商品はいろいろありますが、僕たちが譲れないのはアイデアとクオリティです。実際、クオリティを追求するあまり利益率が低く、売れてもそれほど儲からないんですよ。例えば、フチ子は1個ずつ手作業で細部まで色を塗っていて、顔に紅をさし、スカート内側のディテールまで描き込んでいるので、それだけ手間と費用がかかりますが、リアリティを表現するには手を抜けない。そのこだわりがユーザーの心を惹きつけるのだと思います。数々のユニークな商品アイデアはどのように生まれているのですか?毎月1回、企画や営業の社員10人くらいがテーブルを囲んで企画を持ち寄ります。各自がプレゼンをした瞬間に、みんなが「ワッ」と沸くかどうかが商品化の決め手。説明しないとわからないものは大体ダメです。実際に商品へ仕上げていく工程は、企画した人がすべて行います。監修のために中国の工場へ飛んで行くなんてことも普通にありです。そんな感じで毎月10アイテムくらい新商品を発売しています。また、こだわっているのは社員数を20人以上増やさないということ。なぜかというと、以前勤めていた会社で、人数が増えるに連れて会社がどんどんつまらなくなった経験があるからです。人が増えるとスピードが遅くなり、判断が鈍ります。このオフィスを木造校舎の学校のイメージにしたのも、みんなでワイワイとその場で決める教室のような雰囲気を大切にしたいと考えたからです。最後に今後の展望についてお聞かせください。海外の売上は現在2割程度ですが、将来的には5割を目指しています。特に中国とアメリカでカプセルトイが売れ始めているので、商機を逃さず進出していきます。今、日本人が作る衣食住のきめ細かさが海外で再認識され始めていますから、日本の良さを海外へ広めていけたら楽しいと思います。これからも、日本と世界のカプセルトイ市場へ新しい風を吹き込んでいきたいですね。ついて教えてください。 局、仕事の話はまったくしなかったのですが、帰り僕は最初、営業に専念していましたが、次第に商品企画もやるようになりました。その最初の商品が2010年に発売した「土下座ストラップ」シリーズ。謝罪やお願いという真面目な行為をユーモアに変えたインパクトで大ヒットしました。さらに2012年になって、漫画家のタナカカツキさんを友人に紹介してもらい、カプセルトイの企画をお願いに行きました。ところが、打ち合わせでは趣味の水草水槽の話で盛り上がり、結際に「これ考えたから見ておいて」と企画書を手渡されました。帰って開いてみると、めちゃめちゃ面白い企画がたくさんあって、その中の1つが、コップの縁に引っ掛けるOLのフィギュアでした。その斬新な発想のスケッチを見た瞬間、「これは絶対売れる!」と確信しました。実際に発売してみると、何の宣伝もしないのに、SNSやバラエティ番組などで爆発的に広まり、13年間で累計2500万個のメガヒット商品になったのです。キタンクラブのカプセルトイがこれだけファンの心をつかむ理由はどこにあると思いますか?「コップのフチ子」「土下座ストラップ」をはじめ、「ねこのかぶりもの」「おにぎりん具」など、29株式会社キタンクラブ代表取締役古屋 大貴 (ふるや だいき)1975年、埼玉県生まれ。1994年、株式会社ユージン(現・株式会社タカラトミーアーツ)入社。カプセルトイの商品企画や新規販路開拓などにおいて斬新なアイデアで成功を収める。2006年、株式会社キタンクラブ設立。2012年に発売した「コップのフチ子」が2500万個を売り上げる大ヒットを記録。現在のカプセルトイ・ブームを牽引するメーカーとして、さまざまな独自商品を市場に送り出している。
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