Plusone634
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クルーズトレイン「ななつ星」に採用得して買ってもらう商売をしたい」と、仕事が終わってから材料に精通したケーキ屋さんに毎日通い、深夜まで皿洗いをしながら3年間勉強を続けた。その後、鹿児島に拠点を置くスーパーが併設するベーカリーの商品企画も手がけるようになった。自宅1階の駐車場スペースにミキサーやオーブン、発酵器などをそろえ、自ら試作を繰り返した。「できた商品をスーパーに持って行って、この材料を使ってこう焼けばこんなパンが出来上がるという説明をしました」。常に自分と相手を納得させ、なぜを繰り返しながら実践する姿勢を貫いた。だが、徐々に事業が立ち行かなくなり、56歳の時に会社をたたむ決断をする。再就職先を探している最中に、旧知のパン屋オーナーから、店を閉めるにあたって機械を譲渡したいとの申し出を受けた。自分が考えていた理想のパンづくりを実践するチャンスが天から舞い降りてきた。「食パン工房カズ」を創業したのは、今から15年前、58歳の時のことだ。口コミだけで客が増えていった。探求心に火が付き、食パン、デニッシュパンだけで100種類を超える商品をそろえ、その中から10種類近くを毎日日替わりで出している。2020年1月、ある男性が店を訪ね、買ったパンを外で食べた後に戻ってきた。「とんでもなくおいしいところがあるという評判を聞いてやってきたのですが、本当でした。うちで扱わせてもらえませんか」。聞けば、その人物はJR九州が運行するクルーズトレイン「ななつ星」の料理長だった。「妻ともいつか一緒に乗れたらいいなと話していた憧れの列車。その料理長からお墨付きをいただけたわけですからめちゃくちゃうれしかったですね」と顔をほころばせる。ななつ星への採用がきっかけとなり、テレビでも取り上げられた。しかし、赤崎さんは翌日の行列を見て思った。「1人1本ずつでも、数えたら絶対に後ろの人にまでは回らない。日頃お越しいただいているお客さまに申し訳ないと思いました」。それからは取材も極力受けないようにしている。一方で、ななつ星で食べ、定期的に取り寄せたいという人も増え、中には遠方の離島から取り寄せる人もいる。現在は贈答用のデニッシュパンを商品化し、クラウドファンディングを活用して販売にチャレンジしようと思案している。必要なものだけを本当に必要としている人のもとへ届けるために、赤崎さんの探求心は尽きない。食パン工房カズWebサイトの「お問合せページ」からお取寄せ注文ができます。詳しくは店舗に直接お問合せください。いつも笑顔の絶えない妻の隆代さんと二人三脚で店を守る27100種類を超える中から日替わりで10種類近くのパンが並ぶ事業内容/食パンの製造・販売〒891-0108鹿児島県鹿児島市中山2丁目1-27TEL/FAX 099-260-8083常に理詰めで物事を考える赤崎さん

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