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時の10分の1以下にもなります。加齢により分泌の信号伝達系に「退行性変化(組織の形が変化して、その働きが低下すること)」が生じるのが原因と考えられています。第二に、仕事や身の回りのことからくる精神的ストレスにより調節系の神経伝達物質「セロトニン」の分泌量が低下し、これに伴いメラトニンの分泌量が減るためです。前回触れた通りメラトニンはセロトニンを原料に生合成されるので、セロトニンの分泌量が減るとメラトニンの分泌量も減少します。第三に、夜間、光に当たっている時間(光暴露時間)が長くなることで、メラトニンの分泌量が減ることです(図2)。多くの課題と責任を背負っている中小企業経営者は、ついつい夜中にもパソコンやスマホを見てしまいがちです。実はこれらの液晶画面や蛍光灯から発生する強力なブルーライトが、メラトニン分泌を抑制します。ブルーライトを夜中に過剰に浴びるとメラトニンの分泌が減るだけでなく、脳や体を覚醒状態にする交感神経が優位になり、さらに不眠症を起こしやすくなります。前述の不眠症の要因とメラトニン分泌の仕組みを考慮すると、眠りの質を上げるには以下が有効と考えられます。これは寝つきをよくするための対策で、例を挙げると①38度ほどのぬるめのお湯で体をじっくり温める、②パソコン、スマホなどの電源を切る、③白湯や生姜湯などカフェインのない温かい飲み物を飲む、などがお勧めです(図3)。寝酒は中途覚醒の大敵です。アルコール類を摂ると中枢神経の活動が抑制され、一時的に眠気を生じますが、抑制性の神経伝達物質であるGABAの作用も抑制するため、中途覚醒が起きやすくなります。また、アルコールには利尿作用があるため、夜中に何度もトイレに行きたくなり、中途覚醒しやすくなります。激しい運動は交感神経を活発にさせます。入眠前に心拍数を上げて息があがるほどの運動をすると、交感神経が優位になり、体が覚醒状態となり睡眠を妨げます。運動を行うなら、ストレッチや呼吸運動主体のヨガなどの軽いものがお勧めです。入眠前2時間以内に食事をすると、身体は消化吸収に集中することになり、睡眠時に脳や身体を休めることができなくなります。夜遅い食事になってしまう場合には、牛乳やヨーグルトなどのたんぱく質を多く含み、消化のいい乳製品を少量摂るのがいいでしょう。ぜひ今日から「入眠2時間前」の生活を変えてみましょう。見落としがちな重要なポイントは枕です。自分の体型に合わせて高さや形状、硬さを調節できる枕がお勧めです。私もこれまでさまざまな枕を試してきましたが、自分の体型にパーソナライズできる枕が、首痛などを防ぎ、質のよい睡眠にとって有用です。マットレスも重要です。枕と同じように自分の体型に合わせて高さや形状、硬さを調節してくれるものがお勧めです。こうした特殊なマットレスは通常品に比べ高価ではありますが、眠りの質の向上を考慮すれば決して高価な出費ではありません。眠りの質を上げるために1. 入眠前2時間は「リラックスモード」に入る2. 入眠前2時間はアルコール類を3. 入眠前2時間は激しい運動を4.入眠前2時間は食事をしない飲まないしない自分に合った寝具を選ぶ図3 入眠前2時間は「活動モード」から「リラックスモード」に切り換える村田アソシエイツ株式会社 代表取締役東北大学スマート・エイジング 学際重点研究センター特任教授 村田 裕之わが国シニアビジネス分野のパイオニア。2006年スマート・エイジングのコンセプトを提唱し、東北大学スマート・エイジング国際共同研究センター(現:学際重点研究センター)設立に参画。高齢社会研究の第一人者として講演、執筆、著書も多数。18年5月 Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより優れた業績を上げた人として「GLOBAL AGEING INFLUENCERS」に選ばれた。● 照明を薄暗くして過ごす。照明は蛍光灯ではなく、電球のような暖色系の間接照明にする● パソコン、スマホ、タブレット、テレビを見ない● 穏やかな音楽(クラシックやヒーリング系)を聴く● カフェインのない温かい飲み物を飲む● アロマの香りを装置で部屋に拡散するティグレニュース15こ入と眠2時間前にやるべきTIGRE NEWS

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