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労使協定締結時の注意点時間外労働に対する割増率引き上げから会社を守る翌々月までに代替休暇を取得することを認める制度として「代替休暇制度」があります(スライド②)。代替休暇の付与により割増賃金の支払いが不要となるのは原則として60時間を超えて労働した部分が対象であり、すべての時間外労働が対象ではありません。なお、当該制度を導入するためにはスライド③に示した内容を労使協定の締結により定める必要があります。また、代替休暇の取得を義務付けるものではなく、あくまで割増賃金の支払いか代替休暇の取得かを選択するのは、労働者の意思で判断することとなりますので、代替休暇の取得を強要することもできません。労使協定を締結する当事者は「使用者」と「労働者の過半数代表者」です。この「労働者の過半数代表者」は民主的な選出方法で選任された労働者であることが必要で、この選出方法が使用者の恣意的な選出方法であった場合など、不適切な選出が認められた場合には労使協定が無効となってしまいます。その結果として代替休暇制度自体が無効となります。また、代替休暇を取得した場合であっても25%以上の率で計算した割増賃金の支払いは必要であることから、確実な労働時間および休暇取得状況の管理が求められます。時間外労働に対する割増率の引き上げは、労働者の健康を守る観点から設けられたものです。しかし、中小企業ではやむなく長時間労働にならざるを得ない事情もあります。そのため、代替休暇制度を導入することで労働時間を削減することも一つの方法です。しかし、労使協定の締結や労働時間管理の不徹底が認められた場合には、さかのぼって時間外割増賃金を支払う必要が生じるリスクがあることから、まずは労働時間管理を見直し、実際に行った時間外労働などに対する割増賃金を支払うこと、そして、なぜ長時間労働になっているのか原因を精査し、業務改善により労働時間削減を促すことが良いのではないか?と考えます。また、長時間労働を解消する取り組みを行うことは、「人材確保」や「労働問題リスク」の観点からも不可欠なものであると筆者は考えます。代替休暇制度の導入は、短期的には良い制度のように思われますが、慢性的に長時間労働を行っている企業には労働者は集まらない傾向があります。長期的な視点で長時間労働を抑制し、やむなく長時間労働となった場合には、その対価として法令に即した割増賃金の支払いを確実に行うことが、結果として会社を守るものと思われます。60時間超となる時間外割増賃金の支払いに代えて休暇を与える制度(代替休暇制度)を導入するためには、次の事項を定めた労使協定の締結が必要です。① 代替休暇の時間数の具体的な算定方法② 代替休暇の単位(1日や半日の単位であって、時間単位は不可)③ 代替休暇を与えることができる期間(時間外労働を行った月の末日の翌日から2カ月以内)④ 代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払い日長時間労働に対する規制として、割増率の引き上げが行われます。中小企業では、割増率の引き上げに経済的な理由から対応できないケースも生じる可能性がありますので、代替休暇制度も設けられています。賃金債権の時効延長(さかのぼって給与支払いを求める期間の延長)に伴い未払い残業代請求事案は増加することが見込まれますので、労働時間管理の徹底と、長時間労働にならない業務改善に取り組むことが、会社を守ることにつながると認識していただきたいと思います。<注意点> ①の「代替休暇の時間数」についてスライド②の60時間を超えて時間外労働を行った際の割増率(50%)から、代替休暇を取得したときに支払う時間外割増率(30%)を引いた20%に、60時間を超えて時間外労働を行った時間数(80-60=20時間)をかけて得た時間数(20時間×20%=4時間)が、代替休暇として付与すべき時間数となります。仮に代替休暇の時間数が6時間となり、半日付与が4時間の場合、残りの2時間については50%以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要です。スライド 323代替休暇制度導入要件本号の結論

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