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血液が全身に運ぶものは、酸素や栄養素、水分、老廃物の他に“熱”があります。気温が低下すると体表面の毛細血管が冷やされてしまうため、血管を細くして血流を少なくし、血液を体心部に集中させることで熱が逃げるのを防ぎます。そのため、四肢末端や皮膚の温度が低下し“冷え”の原因となってしまうのです。温かいお湯に浸かると皮膚表面の血液が温められ、それが全身を巡ることによって体心部までよく温めることができます。血流は約1分間で全身を1周するため、お風呂は熱いお湯でさっと済ますより、ぬるま湯でゆったり浸かる方が体心部まで温まり、湯冷めしにくくなります。長湯は肌のバリア機能を低下させ乾燥を招いてしまうため、入浴時間は風呂から上がる際に、額にじんわり汗ばむ程度の温まり方が理想的。温度の感じ方や体温の上がり方は個人差があるため、心地の良い湯温を探してみてください。入浴は湯温によって自律神経に影響を及ぼすという不思議な効果を持っています。個人差はありますが、42℃以上の熱いお湯では、緊張・興奮の自律神経「交感神経」が優位な状態となるため、しゃきっと目が覚めた状態になります。一方で、38~41℃のぬるま湯ではリラックスの自律神経「副交感神経」が優位な状態になり、落ち着いた気分になります。皆さんは、入浴と食事はどちらを先に済ませますか?実は、食事の前後で推奨される湯温が異なります。食事前に入浴をする方は、熱めのお湯がおすすめ。交感神経が優位になると、食欲が減退するため食べ過ぎを抑制することができます。交感神経は、「闘争・逃走神経」とも言われ、敵と闘ったり、獣から逃げたりなど、身の危険を感じた時に優位になる神経です。異常事態の時にお腹が空いてしまっては闘うことができず生き残ることができないため、食欲が抑制される仕組みになっています。夜は活動エネルギーをさほど必要としないため、熱いお湯で交感神経を優位な状態にして、夕食は腹八分目で抑えるのがよいでしょう。食事後に入浴をする方は、ぬるま湯がおすすめ。夕食後にひと休みしてからぬるま湯に浸かると血管が拡張され体表面にまで血液が巡るため、相対的に体心部の血流量が低下します。そうすると、消化吸収に関わる胃腸のはたらきが穏やかになるため、糖分を身体に蓄積してしまうホルモン「インスリン」の分泌が穏やかになり、エネルギーの過剰な蓄積を防ぐことができます。食事直後の入浴は消化不良の要因となるので、30分~1時間ほど休んでから入浴するのがおすすめです。最近は若年層を中心にシャワー浴で済ます方が増えていますが、入浴をすると眠気の増加、活力および集中力の低下など睡眠への準備状態へ導かれることが報告されています。一日の生活にメリハリをつけてくれる非常に安価で身近な健康増進法ですので、是非毎日の入浴習慣を続けてみてください。第2回熱熱熱熱熱熱熱熱熱熱どうして寒くなると身体が冷えるの?お風呂に入るとなぜ身体が温まるの?温度で変わる入浴の効果目的別に入浴方法を使い分けよう!「お風呂」PROFILE一般社団法人美容科学ラボ代表理事。物質工学修士。専門学校講師やオンラインサロン運営、美容メディア監修、SNS発信を通じて「科学的根拠のある正しい美容知識」の普及活動に努める。MAQUIA(集英社)、an・an(マガジンハウス)、『クイズ!脳ベルSHOW』(BSフジ)など多数メディアに出演。血管を拡張させることで四肢末端まで血流を巡らせ体表面から熱を放出させる血管を収縮することで血流を少なくし、体心部へ血液を集め体の熱を守る10~15分間程度がおすすめです。お11理系美容家 かおり暑い時寒い時血管の太さと血流を調整寒くなって、お風呂が気持ちのいい季節になってきましたね。皆さんは、お風呂は湯温によって効果が異なることを知っていますか?お風呂の効果を上手に引き出すために、お風呂で温まるメカニズムや温度による効果の違いを知りましょう。

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