Plusone632
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心理的安全性が保たれたマネジメントスキルを身につける役員、管理職が率先して実践を橘 小室 ありがとうございます。私がつけているアップルウォッチに睡眠の状態を測る機能があり活用しているのですが、身をもって勤務間インターバルの重要性を感じています。当社のもう一つの課題が社内コミュニケーションのあり方です。かつては飲みニケーションが大きな役割を果たしていたのですが、今の時代にはそのようなコミュニケーションはなじみません。上司と部下がどのようにコミュニケーションを深めていけばよいのかアドバイスをいただけますでしょうか。飲みニケーションは時間外で行われ、しかもほとんどしゃべっているのは上司の方なんです。若手社員は、業務時間内に具体的な課題の解決策を一緒に考えてほしいと思っているのです。そこで求められるのが上司の聞くスキルです。中でも大事なのは、若手社員が人と違う意見でも率直に述べることのできる安心感を持てること、すなわち心理的安全性の確保です。Google社が大規模な調査を行ったところ、生産性が高いチームに共通していたのは、リーダーシップの強さでもなく、ベテラン社員の多さでもなく、心理的安全性の高さでした。そこでは、かつてのような指示命令型のティーチングスタイルのマネジメントではなく、それぞれの価値観を認め、山の登り方はあなたに任せるから、一緒に頂上で会おうという、励ましながら下で支えるコーチング型のマネジメントが求められます。相手の目を見てうなずきながらメモをとって話を聞くということもその一つ。社員が自分の意見を言えるようになると自分の言葉に責任をもってやり切るので、あれこれ指示をしていた時と違って上司に何度も聞き直してくるようなことがなく、リードタイムも短くなり生産性も上がります。その分リーダー自身も部門のビジョンや戦略を考える時間ができ、リーダーの仕事も一段上に上げることができるのです。リアルなコミュニケーションに頼りすぎないことも大事です。例えば、オフィスにコミュニケーションスペースを用意したとしても、勤務時間帯が異なっていたり、在宅勤務で出社しない人が増えた今、会社での交流自体が難しくなっています。そこで効果を発揮しているのが、弊社の提供している「朝メール」です。毎朝、自分のその日の仕事内容を上司と同僚に共有し、その日の意気込みも併せて書きます。終業時にもその日の状況を振り返って書き込みます。そうすることで一人ひとりの勤務状況や背景がわかり、他の社員がそれに対して励ましや称賛のコメントを入れることで、オンラインでもワイワイすることができます。そうするとリアルなコミュニケーションもおのずと増えます。橘 今年の8月3日にティグレは創立50年の節目を迎えます。私たちはこれからも会員の中小企業、小規模事業者とともに成長したいという思いを持っています。そのための基盤になるのは人であり、これからも一人でも多くの社員が増え、お客様の相談に親身に乗ることでともに成長したいと考えています。企業がさらに一歩躍進していくためのアドバイスをいただければと思います。例えば女性の活躍を考え、役員、管理職に女性を多く起用していこうと考えた時に、役員、管理職が忙しそうにしていると、大変な思いをしてまで昇進したくないと敬遠されてしまうものです。まず手始めに、役員同士時間外に連絡し合うようなことをやめて、全力で家族や自分のことに気持ちが向けられるようにしてみてください。働き方改革というと、役員、管理職の皆     たまま仕事に臨むと部下に抑圧的な態度さんは従業員のことばかり考えがちですが、ご自身のこともセットで考えてください。特に睡眠は寝始めてから6時間以降にストレスを消滅させてくれます。ストレスを残しをとってしまったりしてしまうものです。ぜひ管理職、役員の皆さんから率先して、こう変えていきますということを宣言してみてください。橘 すぐにでもできることから、時間をかけてじっくり取り組むことまで、本日はたくさんの示唆をいただくことができました。実践できるものから早速取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました。小室 10大学卒業後に入社した資生堂では、インターネットを利用した育児休業者の職場復帰支援サービス新規事業を立ち上げ、社内起業家として注目を浴びる。2006年に株式会社ワーク・ライフバランスを設立。以来、「働き方改革コンサルティング」を1000社以上に提供。クライアント企業では、労働時間の削減や有給取得率、社員満足度の向上につながり、業績の向上にも寄与している。内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚生労働省「仕事と生活の調和推進委員会」委員などの公務も多く務める。小室 淑恵 (こむろ よしえ)株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長

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