Plusone631
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川上から川下までをつなぎ、森の価値を伝える体験するイベントなどを仕掛けるうちに問い合わせが徐々に舞い込むようになっていった。中でも30代、えていることに手ごたえを感じているという。「若い世代の方は環境に対する関心が高く、木、石、土、紙など自然素材だけで出来上がる伝統木造工法はいずれすべてが土に還ることにまず強い興味を示してくださいます。木材は1年かけて天日干ししたものを使っており、すぐに乾かす工法を使った木材に比べ強度が高く、いい香りもします。土壁は、熱容量が大きいため室内温度の変化が小さく、湿度を調整する機能もあるので、住み心地がよいと言ってくださる方も多くおられます」。新築の住宅に加え、伝統木造工法の良さを活かしながら古民家をリノベーションしてほしいという要望も増えている。住む側からだけでなく作る側からも伝統木造工法に対する関心が高まっている。新たに大工を募ったところ、昨年から今年にかけて20代の3人から相次いで応募があり、すべて受け入れた。「工期がゆったりしている伝統木造工法よりも現代工法を請け負う方が実入りもよいはずなのですが、あえて昔ながらの工法に携わりたいという思いをもって遠方からやってくるのには頭が下がります」。うち2人は自らも学んだ大工育成塾で学ばせるなど、後進の育成にも力を注いでいる。人手が増えたことにより、柴田さんも顧客対応や会社経営にいっそう力を注げるようになってきたという。「私が現場に専念して作っているだけでは会社は継続できません。経営や数字のことをもっと勉強していかなければ」と、芽生えた経営者としての自覚が、事業としての成長も予感させる。現在検討しているのが製材機の導入だ。これまでは部材は木材商社を経由して仕入れていたが、自分自身で直接仕入れることで林業者とふれあい、森の現状を見て、感じたことをより多くの人に伝えたいと思ったからだ。「森林がきちんと手入れされているからこそ山の保水性が維持され、それが川となって平地に住む都市部の人の生活を守っています。都市部に暮らす人はまだまだ山のことや森のことに関心が薄いのが現状です。川上から川下までをつなぐ存在になれれば」と、コスト削減につながるだけでない製材機の導入効果について思いをはせる。そして本社を置くこの地で信頼を得ながら、竹林などの手入れでも地域に貢献していきたいと話す。創業から4年。「まずは目の前の仕事を一つずつ丁寧に行いながら、続けられる職人集団になりたい」と話す柴田さん。穏やかなまなざしで自然とともに生きる使命を貫いていこうとしている。紬建築株式会社モデルルームとして見学もできる自宅兼事務所27伝統木造工法の知恵が邸内のそこここに生かされている事業内容/建設業〒459-8001 愛知県名古屋市緑区大高町字釜野19-3TEL:090-6649-7421https://tsumugikenchiku.jp40代の子育て世代からの注文が増10人程度の規模で質の良い仕事を

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