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 橘     6石田考えるきっかけになる情報や材料を提供することに徹する 「抱きしめたい!」では、ぼくが演じる修治が、浅野温子さん演じる麻子の恋人だったのですが、最後にフラれるんです。麻子が可愛らしく「じゃあね」って去っていくところを暗く見送るシーンという設定だったんですけど、後ろ姿の麻子があまりにも可愛くて、ぼくは二本指をおでこから離すいわゆるクーパーポーズをしたんです。すぐさまプロデューサーが飛んできて「いやいや今のグッバイのポーズはやめてください」と言われたのですが、いわゆるトレンディドラマの演出の一翼を担った監督の河毛俊作さんが「いや、いいんじゃないですか。あれはあれでありだと思います」と言ってくれたんです。結局本番ではそのシーンが使われ、視聴者から「二宮修治がんばれ」とすごい反響があって、そこから俳優人生が開けていきました。時々間違っているかもしれないけれど、自分らしく生きたいというところにはずっとこだわってきました。そこから、俳優にとどまらず活躍の場をどんどんと広げていきました。俳優として徳俵ぎりぎりのところで踏みとどまって、それは視聴者の方も含めて周りの人たちのおかげで今の自分があるので、お節介かもしれないですけど少しでも人の役に立ちたいという思いでいろんなことにチャレンジしてきました。1997年4月には「スーパーJチャンネル」という今でも続いている報道番組の初代キャスターを務め、月曜日から木曜日までレギュラー出演していました。キャスターとしては、自分の意見を主張しようという思いはなくて、考えるきっかけになる情報や材料、それから視点を提供することに徹しました。その分、本をたくさん読みましたけどね。特に歴史もの、中でも第2次世界大戦のことについて書かれた本はだいぶ読みました。やはり現場は悲惨で残忍で、その兵士たちにも家族がいたことを思うと、戦争だけは絶対にしてはいけないと思うんです。2015年9月には国会議事堂前で行われた平和安全法制関連法案に対する抗議活動に参加し、集団的自衛権の必要性を否定する発言もしました。そのことでたたかれもしました。でも、お節介かもしれないけれど、ぼくたちが意思を表明することで、それが正しいか誤っているかというよりも、立ち止まって考える人が増えたらよいなと思っています。もちろんテレビでは政治的発言はしません。皆さんご存じのようにぼくは危機の連続で、学習能力は足りないかもしれませんが、いざ危機に直面した時の対応には気を遣ってきました。視聴者の方は、それをしたという事実よりも、記者会見の態度の方を見ているんです。いかにそこで上から目線にならないか、印象を良くするかは考えますね。危機の除染です。1954年、東京都生まれ。早稲田大学商学部在学中に演劇を学ぶために渡米。帰国後、大学を中退して演劇集団 円の演劇研究所研究生となる。1988年フジテレビ系ドラマ「抱きしめたい!」で広く知られるように。1997年にはテレビ朝日「スーパーJチャンネル」でニュースキャスターにも挑戦。数々のバラエティ番組に出演するなど、多方面で活躍している。石田 純一 (いしだ じゅんいち)俳優・タレント

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