Plusone627
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うことはありません。お客さまにとってメリットがあると思いますが、いかがですか」とお話をします。もし嫌だと言われたら売りません。これで皆さん納得されています。なぜ多くの利益が出ているのですか? 当組合は「ミドルリスク・ミドルリターン」の経営をしています。積極的にリスクを取って融資をする代わり、金利は少し高めに設定しているのです。協同組織といえども、ある程度の適正な利益を上げなくては、リスクを取った融資ができなくなりますから、これは仕方がありません。 実際、中小企業は金利の低さよりもスピードを求めています。私は毎朝3時半に起き、5時10分に出社、前日の書類に目を通したうえで、6時半から役員会議を開き、融資案件を決裁しています。ここまでするのも、迅速な融資をおこなうためです。お客さまは中小零細企業ですから、他の金融機関のように審査に1か月もかけていたら、その間に行き詰まってしまうかもしれません。ですから我々の仕事はスピードが命です。シシンヨーでは原則3日以内に融資の回答をするようにしています。職員の指導で気をつけていることは? まず何よりも大切なのは、コンプライアンスです。とにかく悪いことをしてはいけない。お客さまは命の次に大事なお金を預けてくださっているのですから、コンプライアンス違反は絶対にあってはなりません。 次に職員に伝えているのが、融資をすることの喜びです。私はいつも「融資はロマン」と言っています。当組合は、赤字・繰越欠損・債務超過の企業であっても、経営者の人間性や熱意、事業の将来性、社会貢献度などを目で見て判断し、リスクを取って融資します。安定した大手企業に超低金利で貸すのとはわけが違います。赤字だった企業が、我々の融資で力を得て成長していく。これがまさしく我々の仕事の喜びです。 私は山口県の宇部市出身で、宇部に帰ったら同級生がいます。同級生と飲み会をすると、いつも同じ話になります。年金の話、孫の話、薬と病気の話⋮「バカタレ! もうちょっとええ話をせえや!」と私は言うのですが、他に話題がないのです。 女性の同級生からは、よくこんなふうに言われます。「明弘さん、あなたは学生時代、勉強は好きじゃなかったよね。でもあなた、本当に仕事は好きよね。あなたがあんなに朝早くから一生懸命働いて、テレビにも出るほどになるなんて、夢にも思わなかった」。これを言うと役員に呆あきれられるのですが、私はもちろんいずれはあの世に行くけれども、生まれ変わってももう一度シシンヨーに入るつもりです。融資でお客さまを笑顔にする、この仕事が本当に大好きです。山口県宇部市出身。専修大卒。1968年広島市信用組合入組。支店長や本店営業部長、専務理事などを経て、2005年から理事長を務める。シシンヨーで実に54年にわたり、仕事一筋の日々を送ってきた。中学高校時代は野球少年で、今も広島カープの始球式に登板する。著書に『足で稼ぐ「現場主義」経営 頼れるシシンヨーが真骨頂』(きんざい)。会議室に飾られている歴代理事長の写真。経営方針をめぐって、この面々とは大喧嘩をしてきたという。山本明弘(やまもと あきひろ)33

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