Plusone627
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いたという。そこで思い切って「会社員ではなく、地域の人たちに、1軒ですべて完結できる店」を目指し、郊外に大型店「阿波ダイニング しん坊」を出店したのが2019年4月のこと。当然ながら以前に比べ来店客の食べる量が圧倒的に増え、大量の注文に追い付くためのオペレーションにかなり苦労したという。そこでメニューの調理方法にも新たなやり方をどん欲に取り入れていった。例えば、低温調理もその一つ。真空パックに食材を入れ、60℃程度の熱をかけておき、使う時に短時間で調理できるようにする手法だ。食材本来の水分や旨みを保つこともできるため、効率化と味を両立させることにもつながったという。「空いた時間をほかの調理に回すことで提供スピードの向上につなげることができました」と話す。地域で評判が立つようになり、週末ごとに数十人規模の宴会需要で客席が埋まっていたという。また、これまで夕方に店を開け、朝方まで営業していた居酒屋業態とは異なり、「22時の閉店後に家に帰ってから、起きている妻と子供の顔が見られる普通の生活ができていることにも喜びがあります」と話す。コロナ禍を乗り越え、次を見据えるそこへ降って湧いたように襲ってきたのが2020年初頭からの新型コロナウイルスの感染拡大だった。来店客数は減り、宴会需要もパタリと止まった。ビュッフェ形式だったランチタイムは急きょテイクアウトの弁当に切り替えるなどしていったものの、挽回にはほど遠かった。「3、4カ月もすれば収まるだろうという当初の見通しが甘かった」と荒川さん。客数は減っていたものの、急な来店を想定して従業員を多めに手当てしていたことが裏目に出て、赤字の状態が続いたと悔しがる。昨年には思い切ってオペレーションのやり方も見直し、今では当時の3分の1のスタッフで回せるようになっているという。ワインの品ぞろえを増やしたほか新たにクラフトビールをメニューに入れるなどアルコール類の充実を図る一方、来店客への特典を付けたLINE会員を新たに募集するなど、できることは何でもしてきた。昨年秋以降にぎわいを取り戻しつつあるものの、宴会需要がまだ戻ってきていない状況だという。コロナとも格闘しながら駆け抜けてきた3年間だったが「余裕ができればまだまだいろいろやりたいことがある」といきいきした表情で語る。バリアフリー化、いけすの設置、屋外にバーベキュースペースを設けることなど挙げればきりがないという荒川さん。苦難の先に明るい未来を見据えている。 オープンキッチンで調理をする荒川さん。カウンター、個室、宴会スペースなどがあり多彩な用途に対応する。事業内容/飲食店経営〒779-3120 徳島県徳島市国府町南岩延 字三反地32-10tel:088-661-3333https://tks-shinbo.owst.jp/「阿波ダイニング しん坊」エスボウズ株式会社29

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