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今回は、今年4月1日から中小企業も対象となる「パワハラ防止法」についてお話します。パワハラ防止法とは近年大きな問題となっているパワハラに対し、職場でのパワハラ防止を義務付ける「改正労働施策総合推進法」のことで、企業にパワハラ防止のための対策を行うことが求められます。大企業では2020年6月1日から義務付けられており、中小企業では本年4月1日から対象となります。具体的には、①会社としてハラスメントを許さないといった方針を定めるほか、就業規則と同じようにパワハラ対策に関する規程を作成・周知し、②問題が生じた際に適切に対応できるよう、相談窓口を設置するとともに労働者に周知すること、③社内研修等により啓発を行うことが求められます。(スライド①)労働環境の変化昭和、平成から令和となり、働く環境も大きく変化してきました。筆者が社会人となった2003年当時と比較しても、だいぶ様変わりしたように感じます。労働環境が大きく変化した原因としては労働力人口の減少や少子高齢化、日本型経営の限界などが挙げられます。また、働く人々の意識も変化し、都道府県労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、2010度には約4万件でしたが、2019年度には年間8・7万件を超え、右肩上がりで増えています。(スライド②)これは、解雇に関する相談件数の2倍以上もあり、大きな社会問題となっています。なぜ、パワハラ対策が必要なのか「人手不足の時代に、ハラスメントが横行する職場で働きたい人がいるでしょうか?」と、筆者は社内研修やセミナーなどの冒頭で質問します。新卒採用の際にはSNSなどでその会社の口コミを確認することが常識となっている現在、「他人の口に戸は立てられない」ため、SNSなどに投稿された際の影響は、会社の存続にかかわる大きな問題となります。また、求人を出してもなかなか応募がないというケースでは、離職者の退職理由を確認してみると「人間関係が原因」というケースも珍しくありません。パワハラ対策の基本「法律が変わって、義務化されたから」と、とりあえず規程を整備して研修をしたという程度ではパワハラはなくならいと思います。理由は簡単で、パワハラをする人に「自覚がない」からです。暴言や暴力は別として、仕事上の指導の延長線上にハラスメントが存在すること、つまり、「指導とハラスメントの線引き」を自覚することが求められます。筆者の感覚では、普段からコミュニケーションが円滑な職場であれば、基本的にはハラスメントの問題は起きないと思います。また、強い口調で指導したとしても「ハラスメントだ!」という人もいないでしょう。裏返して言えば、普段からコミュニケーションをとっていないにも業務支援会社の守り方❺Vol.文◎ 江口俊彦(特定社会保険労務士)ハラスメント対策と労務管理スライド 1改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が求める対策① 事業主の方針等の明確化とその周知・啓発「ハラスメントは許しません!」という会社の方針を明確化(文言化)し、ポスター等で掲示するほか、ハラスメント規程を整備し、周知すること。② 相談に応じ、適切に対応するための体制整備被害者や第三者が相談することができるよう、対応担当者を設け、社内に周知する。なお、男女別々に担当者を設けることが望ましい。③ 社内研修などでの啓発ハラスメント規程に関する内容の説明のほか、厚生労働省のポータルサイト「あかるい職場応援団」の動画等を用いた研修を実施する。22

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