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の士業の人を選任する」のが実情です。その理由は、認知症となった被後見人の子どもが、親の利益に反して預金を使い込んだり、土地を売却したりする事例が少なくないからです。選任された「成年後見人」には、その財産の価額に応じて、毎月2万円から6万円の報酬を支払わなければならず、家庭裁判所が被後見人の利益に反しないと判断しなければ、「預金の解約や土地の売却」をすることはできません。また、本人の判断能力が回復しない限り、一旦利用を開始した成年後見制度をやめることは原則できません。毎年、支出した明細を家庭裁判所に報告しなければならず、様々な手間と費用がかかります。A子さんの場合、お父様は認知症が進んでいても身体は健康なので、5百万円を引き出すため、同額程度の報酬の支出をしなければならない可能性がありました。相談の結果、お店の所得からお父様の介護費用等は捻出することとなりました。また、預金以外の相続財産は、A子さんがお住まいの店舗兼居宅の土地建物と、もう一人の推定相続人であるA子さんのお姉様が住んでいる居宅の土地建物であり、姉妹の関係は良好なので、預金以外の財産分割に問題はないとのこと。今後は姉妹間で介護費用の分担方法を相談して決めていくことになりました。2025年には65歳以上の5人に1人が認知症!家族信託と成年後見制度の違い各制度のメリット、デメリットの比較、費用の検討が必要です。それぞれの制度に精通した実 A子さんのお父様が認知症でなければ、相続財産である土地建物等を生前に売却する必要はなく、「定期預金」だけが問題ですので、定期預金を解約し「A子さん名義の受入口座」に移します。その際に、「家族間の財産管理契約」を結び、その口座からの支出は、お父様の生活費、介護費用等に限定し、かつ明細をのこしておけば、相続時に他の相続人の方への説明を明確にできます。また、意思能力があると「任意後見制度」「家族信託」が利用できますが、それぞれにメリット、デメリットがあり、高額な費用がかかります。上の表にまとめましたのでご参照ください。ワンポイント・アドバイス概要財産管理対策できる時開始時期不動産の処分監督機関初期費用家族信託家族や親族等が受託者となり、委託者の財産の管理、運用、処分を行う。その利益は受益者が受ける。信託契約で受託者、委託者を決める。受託者が行う。認知症等で判断能力が低下する前でないとできない。原則、契約時から。信託目的の範囲内で自由に管理、処分できる。契約で「信託監督人」や「受益者代理人」を定めることができる。信託財産の評価額の1.2〜2%が家族信託導入にかかる。注)相続税申告以上の費用がかかる。任意後見認知症などの判断能力低下に備え、財産の管理や身上監護を行う人を選ぶ制度。「被後見人」が「任意後見人」と「任意後見契約」を結ぶ。任意後見人が管理する。任意後見監督人が必要。認知症等で判断能力が低下する前でないとできない。認知症等が悪化し、任意後見監督人選任の申立てをしてから。家庭裁判所や任意後見監督人の同意を得ずに、居住用不動産を売却できる。任意後見監督人が任意後見人を監督する。公証役場に支払う手数料等と専門職に金10〜15万円程度の報酬がかかる。また、任意後見監督人申立て時に同様の費用がかかる。法定後見認知症や判断能力が低下した人を守る制度。家庭裁判所が成年後見人を選任する。成年後見人の役割は被後見人の生活サポートや法的行為の代理など。成年後見人が管理する。認知症などになった後に手続きができる。成年後見人の申立てをしてから。合理的な理由があれば処分は可能だが、居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要。家庭裁判所と成年後見監督人が、成年後見人を監督する。裁判所の費用以外に、専門職への報酬が金10〜15万円程度。大阪では親族の成年後見人は認められていないティグレニュースTIGRE NEWS15

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