Plus One No.626
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日本で起きているMMTへの間違った反発MMTはなぜ日本が破綻しないと言えるのか得分を政府が全額給付しています。それに加えて先進各国では、国民の所得が回復するまで消費税を減税するなど、国民からお金を吸い上げることを中断しているのです。こうした当たり前の取り組みを政府としてやるべきだと言っているのがMMTなのですが、残念ながら日本では強烈な反発があります。我が国の多くの政治家、経済学者、官僚は次のように言うのです。「政府がお金を使い続ければ国民の所得は維持できるだろうが、財政赤字が膨らんで国が破綻し、もっとひどい状況になってしまう。だから、コロナ不況下でも消費税10%は必要で、多額の給付金も配れない。だから、耐え忍んでください」と。何たることでしょう。諸外国では政  9        業の自助努力が足りない」とか「経営者府が莫大なお金を使って、コロナ禍で失われた国民の所得水準を守ろうとしているのに、日本では守ろうとしていないのです。その結果、国民所得は減少し、消費は下落し、多くの中小企業が苦境に追い込まれています。これは「企が無能だから」とは全く無関係で、単に「政府が無能だから」起きているのです。MMTの最大のポイントは、こうした日本の政策が間違いであることを実証していることにあります。日本国政府が日本円の国債債務で破綻するのか?アメリカ政府が米ドル建て国債の累積債務で破綻するのか?ということです。結論から申し上げれば、各国政府は破綻しないと確信してお金を使い続けているわけで、少なくとも国民の所得水準が回復するまでの間は惜しみなくお金を使っています。ルーズベルトも、習近平も、オバマも、バイデンもそうしたのです。日本以外の主要先進国は、国民の所得水準を回復する程度の支出で破綻するリスクはないと、MMT的な判断をしています。ところが、日本政府の現在の目玉政策は18歳未満の子どものいる家庭に、所得制限付きで10万円を1回ぽっきり給付するだけ。それ以外は配ろうともしません。これでは本当に困っている国民の所得水準を守ることなどできるはずもなく、ますます経済は停滞していくばかりです。その理由は次の一点です。「アメリカ政府は米ドル通貨の発行権を、中国政府は中国元の発行権を、日本政府は日本円の発行権を持っているから破綻しない」のです。破綻という概念は「借りたお金を返せない」ということ。例えば中小企業が破綻するということは、銀行から借りたお金の満期が来た時に、それを返済するお金がない時に生じます。この時、企業は破産状態となり、資産を全て処分し、会社はそれ以上ビジネスができなくなります。でも、ちょっと待ってください。日本の多くの皆さんは、この企業の破産イメージと、国家の破綻イメージが同じだと思っていませんか?国債を発行し過ぎてお金を返せなくなったらこの国は潰れてしまい、日本経済が地獄に落ちると考えていませんか?企業の破綻は返す時にお金を用立てできなくなるから起きます。でも、日本政府は自分でお金を作ることができます。自分が発行している通貨を人から借りて、返す時にお金がないなんてそんなことが起きるでしょうか?国には通貨発行権があるのです。他の国はそれがわかっていて、お金を国民に配っています。でも、日本ではこのままプライマリーバランス(国の財政収支)の赤字が続けば、日本は沈没するとまくしたてる政治家や官僚がいて、こうした詐欺師のような人たちに多くの日本人がだまされているのです。現代の通貨は「不換紙幣」です。金本位制の「兌■■■換紙幣」の時代なら、国に通貨発行権があっても、中央銀行が持っている「金」の総量分しか通貨を発行できなかったわけですが、20世紀に起きた世界大恐慌から脱却する時に「不換紙幣」が世界的に普及することになり、それ以来、政府は自由裁量で通貨を発行してよいことになっているのです。だからMMTは「現代」貨幣理論であり、反MMTの人たちは、金本位しょう。今は「不換紙幣の出せとMMTは言っているだけなのです。制時代にあった「前現代」貨幣理論、1世紀前の呪縛にとらわれて政策を組み立てているのです。こんなバカげた話はないで時代」であることを思い

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