Plus One No.626
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100年前から世界中で効果を上げてきた実績ある経済理論コロナ禍の今、MMT(現代貨幣理論)が改めて注目を集めています。日本の経済政策の常識を覆すような理論。これが正しければ、失われた20年と言われる日本経済の停滞を根底から改善できるのです。だから、MMTがコロナ禍の特効薬と注目する人たちがいる一方、こんなのはまやかしだと反対する人もいて、論争は世界中で起きています。ただ、経済学者の立場から言うと、MMTは新発明の特効薬ではなく、100年前からずっと使われている薬であって、MMTという新しい名前が付けられただけ。この30年間、日本で使われることがなかったから話題になっているだけなのです。MMTが言っていることは極めて簡単。「経済がデフレになったら、政府がお金をたくさん使えばいい。経済状況が良くなるまでお金を使い、元通りになったら戻せばいい」ということです。この医療行為はこれまでも世界中で行われており、時代を遡れば、1930年代に起きた世界大恐慌からアメリカを脱却させた「ニューディール政策」がそうだし、当時の日本でも高橋是清蔵相が同じことをやりました。また、2008年のリーマンショックで世界同時不況が起きた時、アメリカは90兆円、中国は60兆円の政府支出を行い、ダメージをほぼゼロにしました。つまり、不況というのは「民間人が        8金を使えば、世間のお金の総量が減ら貧乏になってお金を使わなくなること」なので、使わなくなった分、政府がおず所得が守られ、所得が回復して消費が増えれば、元通りの経済状況に戻るという簡単な理論なのです。だから、2020年に世界を巻き込んだコロナ大不況下においても、アメリカやヨーロッパ諸国、中国は、国民の所得水準を維持するために、政府が莫大なお金を使っています。アメリカではトランプ前大統領が400兆円、バイデン大統領が400兆円、合計800兆円を政府が支出したし、イギリスも国民の所得を京都大学教授 藤井 聡80%維持すると宣言し、目減りした所新春インタビュー2020年から続くコロナ禍により、経済成長がいっそう鈍化している日本。そんな中、経済学の常識を覆すような論争を巻き起こしているのが「現代貨幣理論=MMT」です。MMTは日本経済回復の特効薬なのか、それともまやかしなのか。『MMTによる令和「新」経済論』の著者である京都大学教授・藤井聡氏にお話を伺いました。日本の未来デフレ・スパイラルMMTがの日本を救う

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