Plus One No.626
28/36

丁寧な積み重ねの先に、未来を繋げていきたい仕上がりの丁寧さは手作業の板金だからこそ間違いのない仕事を積み重ねる年々縮小していく板金市場で、受注を逃さないのは株式会社エムスチール松木祐二社長だ。コロナ禍でも最小限の影響に留めた堅い事業基盤は、丁寧で小回りの効く手作業の板金技術があればこそ。〝おうち時間〟が増えたことにより後回しとなっていた家の改修依頼が増加し、細かなニーズに対応可能な板金が必要となった。「一枚の金属板から手作業で作るので、お客様のご要望に合わせた細かい設計に対応できます。古い家は小さな板金が多いので、手作業での板金が求められるんです」鉄や銅、ステンレス等、金属の原板から加工品を作り上げ、取り付けまでワンストップで対応できるのがエムスチール社の強みだ。加工機を使用した工程と比較してタイムラグが少なく、納期を短縮できるという。松木さんは『一級建築板金技能士』という板金業界の最上位国家資格を所持している。試験では、建築板金に関する知識の他に、制限時間内に課題の板金製品の設計図面を描き、最低限の道具で加工して作り上げたものの精度を問われる。手作業板金の仕上がりは、機械加工では実現できない丁寧さがあるのだ。「とにかく遅くてもいい。ちゃんとやること」松木さんが日頃から弟子に言い聞かせていることだ。手早く作業をして納品をすれば利益は上がるが、作業が雑になると顧客からの信頼を失いかねない。「早くと言ってもキリがないので言いません。安全に、しっかりした仕事をやってもらった方が結果的に良いことが多いんです」仕事の質を上げるために、暗くなったら作業は終了。しっかり睡眠を取るように言って帰宅させる。世間では生産性が重視される風潮の中、手作業で作る職人だからこそ、目先の利益よりも品質と安全、 余った銅板を叩いて伸ばし、作られた折り鶴 ささやかな気遣いにも職人技がきらり28株式会社エムスチール代表取締役 松木 祐二さん東京

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る