Plus One No.626
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次に、2020年4月から賃金債権の消滅時効(遡って給料を請求できる期間)が5年間(当面は3年間)に改正されました。これは「残業代を遡って請求する期間」が従前の2年間から5年間に延長されたということです。つまり、労働基準監督署の臨検(立ち入り検査)で残業代未払いを指摘されたとき、「遡って計算して支払いなさい」という指導についても5年間になるということです。この法改正も筆者がお仕事をさせていただく世界では大きな影響があります。また、過労死ラインの時間外労働についても80時間といわれますが、司法は60時間以上となると負荷が大きいと判断する傾向が強いといえます。労働時間を管理する義務が事業主にはあり、この義務を守っていないとなれば、相応の影響が出てくることは容易に想像できるのではないでしょうか。労働時間とは、端的に表現すると「会社の指揮命令下にある時間」です。(最高裁判決H12・3・9)つまり、就業規則や雇用契約書に記載した時間ではなく、実際に会社にいて、いつでも仕事ができる状態であれば労働時間となります。しかし、休憩時間や「本当に残業なのか?」と経営者が思うケースも多々あります。このような問題が生じた場合、「労働時間ではない」ということを証明する義務は会社にあります。この証明ができなかった場合、通常は労働者が請求した労働時間に応じたいわゆる残業代を支払う必要が生じ、月給20万円の労働者が20時間の時間外労働の賃金を請求してきたとき、1年間で約35万円、5年間となった場合には約175万円の支払い等が必要となります。これらの問題に対応するため、会社における労働時間に関するルールを設けるほか、いわゆる残業を労働者本人の意思で自由にできる環境ではなく、しっかりと管理できるように事前申請や許可制を導入し、申請があった分は確実に残業代を支払う体制を構築することが大切です。(スライド3)思わぬ形で未払い残業代を請求されるケースは、今後増加すると思われます。よりいっそうの管理を徹底していただき、「まさか」が起きないよう、今一度、労働時間管理の体制をご確認いただきたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。労務管理の観点から労働時間管理は会社を守る23一方、各保険制度の加入対象者か否かを判断する労働時間は、未払い残業代問題や過労などの労働災害が発生した際に重要な確認事項です。行することが求められます。始業前の35分と終業後の45分で80分/日の時間外が発生?休憩時間も実際は30分しか取っていないとなれば、110分もの時間外が毎日発生する??スライド 3労働時間であるか否か?8:259:00始業・終業時間ぴったりにタイムカード等を打刻することは現実的に困難なため、タイムカードの打刻に関するルールを設けるほか、確実な残業申請制度を運用する、休憩時間の確保などの対策を徹底することが大切です。12:0013:0018:0018:45労働時間管理は会社の義務であることから、確実に把握できるルール(運用方法)を検討し、実所定始業時間9時00分、終業時間18時00分、休憩時間60分の場合本号の結論年金制度をはじめとする社会保障制度は、働く人々の保険料で運用されている側面が大きく、加入する労働者が増えることは、制度の維持にも重要なポイントとなります。しかし、加入していることで保険給付を受け取ることもできることから、ルールに従った加入は大切です。

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