Plus One No.626
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気になる病気や健康について分かりやすく教えていただく「健康相談室」。第4回目は足の血管の血流障害によって引き起こされる「末梢動脈疾患(PAD)」。足のしびれや痛みから始まり、病気が進行すると壊死にまで至ることがあります。「血管の老化は人間の老化」と言われるほど、健康と血管は密接な関係にあります。足の血管病である「末梢動脈疾患(PAD)」は、加齢により血管が老化した結果、動脈硬化をはじめとしたさまざまな要因で、足の血管が詰まることで引き起こされる病気です。PADの症状には4ステージがあり、初期である1段階目は足のしびれなどで自覚症状は極めて軽いです。2段階目では普段は痛くないものの、歩くと痛くなる状態。3段階目になると、安静時を含め慢性的に痛みを感じる状態となり、4段階目には潰瘍や壊死にまで至ります。「PADの最も大きな要因は老化。50代頃から症状が出る人が現れますが、若い人にはいません。血液は心臓から脳、また手足の隅々にまで送り出されているため、健常時でも血管に相当な圧力がかかっています。そのため、年齢を重ねるごとに少しずつ傷んでいき、やがて耐えられなくなると、血管自体が詰まってしまう懸念があります」PADの要因となる老化は、遺伝の他に喫煙、生活習慣病などによって加速されます。「老化の速度には個人差が大きく、遺伝的な要因が大きいと言われています。PAD患者は男性が多く、6〜7割を占めますが、その理由として喫煙者や生活習慣病の方に男性が多いことが挙げられています。対策として禁煙は必ず実施し、糖尿病、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を改善することが重要です」治療法は、禁煙や生活習慣改善指導の他に服薬と血管内治療、外科手術があります。「服薬は脂質異常症の薬や抗血小板薬、EPAなど、血液がサラサラになる薬を飲んでもらいます。それでも改善しない場合は血流を良くする血管内治療を行います。血管中にカテーテルを通し、閉塞している箇所をバルーンで膨らませて強制的に拡張した後、金属製の網状筒で固定します。外科手術では、血管の詰まっている箇所を飛び越えるように人工血管を繋げます。治療法にはさまざまな選択肢があるので個々の患者さんの状態やニーズを見極めつつ最適な方法を選択します」けではなく、兆候を発見することで病気の進行を防ぐことができます。「足と腕の血圧の差を測るABPI測定という検査があります。健常時では足の方が約10%高くなりますが、腕と同等、もしくは低い値になると足の血流が悪くなっている状態です。ABPI測定はオプションの検査項目ですが、安価で非常に費用対効果が高く、早い段階でのPAD対策に有効です。血管病はじわじわと進行し、症状が出現してからでは治療に難渋することがあります。そうならないためにも、健康診断をしっかり受診することで兆候を見逃さないことが大切です」PADの症状は突如現れるわ第4回足の血管病(東京都港区)20健健康康相相談談室室大木 隆生先生東京慈恵会医科大学“血管の老化”に拍車をかけるのは“血管の老化”に拍車をかけるのは喫煙や生活習慣病。喫煙や生活習慣病。

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