Plus One No.626
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衆院選で野党共闘はなぜ敗れたのか霞が関の影響力が非常に強い岸田政権政治の世界では、1+1は必ずしも2にならないと言われます。昨年10月の衆院選において野党陣営は、それまで分散していた野党候補の票を集めれば、数の上で自民候補に勝てるはずという幻想に踊らされてしまったのでしょう。実はこれには前例がありました。2019年の大阪府知事・市長ダブル選挙でのこと。この時、自民党大阪府連は大阪都構想に反対するために、驚くべきことに共産党と組むという「禁じ手」を選択してしまったのです。これにはさすがの自民党支持者も反発し、その結果、自共共闘は敗北、自民党支持票は維新へ流れることとなったのです。この大阪ダブル選の結果を学習していたならば、立憲民主党も考えたはずなのですが、選挙の1年以上前から市民団体が中心となって、野党共闘を前提に選挙活動を行っていたのです。例えば東京8区で石原伸晃氏を破った野党統一候補の吉田晴美氏は、立憲がというより市民団体が主導するかたちで立てられた候補者でした。立憲としては、これまでのさまざまなしがらみから市民団体と連携していかなくてはならない。その市民団体が、共産党との共闘を求めている以上、それを否定するわけにはいかなかったのです。こうした背景があって、立憲も共産党と組むことに腰が引けていたのです。だから、枝野さんと志位さんが街頭で並び立つこともなかったし、立憲は、仮に選挙に勝っても共産党は「閣外からの協力」であって連立政権ではないと言っていました。これって有権者にわかりますか?この覚悟のなさが、自民党の安定過半数、維新の躍進を許した最大の要因だと言えます。以下の点は岸田政権の宿命と言えるでしょう。岸田さんが総裁になるに当たって財務省、経産省が全力で応援したことに加えて、岸田さんが開成高校出身ということもポイントです。これまで開成出身の総理はいませんでした。実は開成学園の理事長は丹呉泰健氏という元財務次官。岸田さんの親戚に国税庁元長官がいることもあり、人脈・血脈から見て財務省の影響力が強いのです。また、総裁選で勝つためのシナリオライター的役割を果たしたのが、安倍晋三元首相の右腕といわれた今井尚哉・元首相補佐官。もともと経産官僚で、叔父が日本製鐵元会長、経団連元会長の今井敬氏です。要するに、岸田政権は財界・経産省枢軸と財務省によってぐるぐる巻きにされているというわけです。そこで、岸田さんはバランスをとる         ために、党実力者の甘利明氏を幹事長に据えて、霞が関に対する抑えを期待したのに、肝心の甘利さんが衆院選で11経済ジャーナリスト 須田 慎一郎新春インタビュー今の日本経済中小企業の2022年岸田政権と

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