Plus One No.626
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治療行為なくして日本のデフレは永遠に治らない詐欺師にだまされたままでは日本の未来はない今、日本がデフレである理由は「この20年間ずっとデフレだったから」です。そこに治療行為を施さない限り、2022年もその翌年もデフレはずっと続きます。では、デフレが続くと何がいけないのでしょう。デフレは賃金の下落を…賃金の下落は消費・投資の下落を…消費・投資の下落は法人の収益下落を…法人の収益下落は賃金の下落を…という連鎖を起こし、デフレをいっそう進行させます。この悪循環が「デフレ・スパイラル」であり、このままでは日本がデフレから脱却することはあり得ません。デフレは第一義的に日本人の貧困化を招き、第二義的に国力の低下を招きます。日本国民の給与水準が上がらない中で、日本の不動産や企業が中国人をはじめとした外国人の手に落ちていき、資本主義的植民地支配が起きていきます。そうなると、日本人が一生懸命働いてお金を稼いでも、収益の多くを外国人経営者が持っていく。外国人によるこうした経済的支配が今後どんどん進行していくのです。2022年の日本経済の命運を握ってこうした危機的状況の中で、いるのは岸田政権です。岸田首相は「国民の所得倍増」「経済安全保障」など、一見まともなことを言っていますが、言葉と裏腹にやっていることには疑問符が付きます。「病気を治すぞ!」と言いながら、病人に毒を飲ませかねない処置を施しているのです。なぜかと言うと、岸田さんの言う「新しい資本主義」を目指して、さまざまな諮問会議を作っていますが、そうした会議体には、プライマリーバランス黒字化目標を堅持せよという「毒を飲ませる」人たちがメンバーに入っており、岸田さんもそれをわかってメンバーに入れているのだから、「プライマリーバランス規律を撤廃して、国民が救われるまで財政支出を増やそう」なんて考えていないことは明らかです。このような状況下では、2022年以降もお先真っ暗な日本経済ではありますが、MMTの考え方を推進しようという機運が少しずつ高まっているのも事実です。2021年秋の自民党総裁選で、高市早苗さんがプライマリーバランス規律の凍結をテーマに挙げ、野党もそうした政策を打ち出しています。これらの政策を実現できるようになれば中小企業の未来も明るいですが、できなければ、待っているのは地獄でしょう。政府も中小企業に対する支援策などを小出しにしてくるでしょうが、そんなものは大病を患っている人に絆創膏を貼るようなもので、何の効果もありません。MMTという言葉を使わなくても、欧米諸国や中国など日本以外の主要先進国はすでにMMTの考え方に則った政策を実践して国民を豊かにしています。今の世界の状況を見ていただきたい。通貨発行権を持つ国で破綻した国なんてありません。ハイパーインフレになった国もありません。どうかこの事実を直視してください。いつまでも詐欺師の言う「財政健全化」にだまされていてはいけません。デフレ・スパイラルから脱却し、日本が本当に豊かな国になれるよう、今舵を切らなければ、明るい未来は訪れないでしょう。10       藤井 聡 (ふじい さとし)1968年奈良県生まれ。工学博士。京都大学大学院工学研究科教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長。第二次安倍政権で内閣官房参与を務めた。専門は都市・国土計画、経済政策等の公共政策論および実践的人文社会科学研究。著書に『プライマリー・バランス亡国論 日本を滅ぼす「国の借金」を巡るウソ』(扶桑社)『令和版 公共事業が日本を救う 「コロナ禍」を乗り越えるために』(扶桑社)ほか多数。

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