Plusone No.623
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星野星野 5  橘 橘 スペイン風邪を参考に仮説を立てる星野代表は、過去に観光業に打撃を与えたリーマン・ショックや東日本大震災と比べて今般のコロナ禍の危機の質はどう違うと感じ、どのような手を打ったのでしょうか。ナスとなり、社内はパニック状態になりました。これまでの危機の時と異なるのは影響が長期間に及ぶということ、かつ全国的にダメージを受けるということでした。危機管理の鉄則に当てはめて対応しようと考え、まず着手したのが会社の現状を社員に伝えることでした。売り上げの確保、コスト削減の度合い、外部からの資金調達の3つの要素をふまえ倒産確率をはじき出して公表しました。売上9割減が1年半続くと確実に倒産します。これをふまえ18カ月サバイバルプランを策定しました。その際に参考にしたのが100年前に流行したスペイン風邪です。スペイン風邪は波を繰り返しながら1年半で収束したのです。その波を予測してなんとか4割減に抑えたいと考えました。では6割を確保するための市場はどこにあるのか。国内における28兆円の観光需要の昨年4、5月の売上は90%マイうち22兆円は日本人による日本国内観光が占めています。そこで自宅から1、2時間程度の範囲を旅行するマイクロツーリズムに商機があると見込みました。その考えを4、5月のうちに発信しました。昨年の4、5月頃はまだ先行きの状況がわからず、いろんな立場の人が様々なことを言っておられ、皆どうして良いかわからない時期だったと思います。よく明確な作戦を打ち出すことができましたね。パンデミックスの経験者はいない、専門家でも正確な予測などできないのです。予測のつかない危機対応において経営者がなすべき最も大事なことは、間違ってもよいので仮説を立てることです。仮説がない限り、作戦は立てられませんし、先行きどうなるかわからない状況では社員は不安に感じてしまいます。もちろん、その前段として雇用を守ることを宣言しました。せっかく作戦を立ててもそれを遂行する社員に安心感がなければ前に進む気持ちにはなれません。人材がいれば復活時に後れをすぐに取り戻すこともできます。実際、作戦を立ててからの社員の動きは非常に迅速で、見事にやり切ってくれました。星野リゾート 代表スペシャSPECIAL 星野 佳路

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