Plusone No.623
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改善、改良こそ      日本の強み日本経済の強さは多様な 中小企業文化にあるくようになり、自転車が大衆に一気に普及しました。すなわちライフスタイルが大きく変化し、そこにビジネスチャンスを見出した中小企業が伸びていったのです。同じように現在も時代の転換期にあると考えています。100年前のキーワードが西洋文化だったとすれば、今回のそれはIoTです。既存の日本のビジネスにIoTの要素を追加するだけでとてつもなく大きなマーケットをつくり出すことができるのではないかと思っています。先日、ゼミの学生に「私たちが欲しいもの」を発表してもらいました。その一つにスマホで操作できるテーブルタップがありました。帰宅直前にスマホを使って電源をオンにすることでテーブルタップに差し込んでおいたシーリングライトやエアコンがつき、帰宅した時には明るくて涼しい家に迎えられるというわけです。玄関ドアの施錠をスマホで確認できるというアイデアもありました。皆さんも家を出てしばらくして「あれ、カギ閉めたっけ」と不安になった経験があると思いますが、それがスマホを使って遠隔で確認できるのです。テーブルタップをつくっている会社、カギをつくっている会社はいくらでもあります。要は皆さんが手掛ける事業の上にIoTの要素を付け加えるだけでよいのです。日本の企業は、いわゆる胴元であるプラットフォーマーとしてのビジネスではGAFAに負けてしまいましたが、末端のところの改良、改善は得意とするところであり、そこでの勝負ならじゅうぶん勝算はあります。こうした事業を始めるに当たって大事なポイントは、ITやプログラミングに精通した若い社員と連携することです。ダウンと大規模PCR検査とワクチン接種の3つがあります。ロックダウンと大規模PCR検査については全く取り組むことなく、ワクチン接種についても先進国の中で大幅に出遅れました。自粛頼みにしたためにいつまでもコロナが収束しない状況が続き、経済を無茶苦茶にしました。あまりの無策ぶりに、菅政権の成長戦略の柱である生産性の向上を、コロナ禍で弱った中小企業を大企業に飲み込ませることで実現しようとしているのではないかとさえ思ってしまいます。菅政権は今の中小企業つぶしをやめて、持続化給付金をもう一度出すべきです。わたしは多様な中小企業があることが日本の文化だと思っています。芸能界でも到底売れなさそうな芸人に光が当たってとんでもないブームを生み出すことがあります。半導体事業の育成にとてつもない金を突っ込んで一つの柱を立てようとするのではなく、既存の小さくとも個性豊かな中小企業を危機から救うことこそ日本経済全体の強さにつながっていくと思っています。―今の時代に当てはめた時に中小企業にとってどんなチャンスがあるとお考えですか。―具体的には。―菅政権のコロナ禍対策をどのように評価していますか。  コロナ対策として大きなものは、ロック    (もりなが・たくろう)東京大学卒業後、日本専売公社(現日本たばこ産業株式会社)に入社。経済企画庁への出向、コンサルティング会社の勤務を経て、現在は経済評論家として活躍。獨協大学経済学部教授も務める。著書に「年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学」 (PHPビジネス新書)など。31森永 卓郎

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