Plusone No.623
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四季を通して豊かな    琵琶湖の魚たち加工食品、ICT化など、  新たな収益道を模索琵琶湖最大の島で、唯一の有人島である沖島へは、湖の中西岸に位置する滋賀県近江八幡市の堀切港と沖島港とを10分強で結ぶ船便で行き来する。取材に向かった5月下旬に乗り合わせた船客にはブラックバスを目当てにした釣り客のほか、島めぐりを目的にした女性同士の観光客も見受けられた。コロナウイルスに対するワクチン接種が徐々に進みつつあるが、沖島の住民は「高齢者以外にも接種が認められる」という離島特例により、5月中旬時点で約200人の島民のほぼ全員が2回のワクチン接種を終えていた。「少しずつ島に日常が戻りつつある」と、沖島で生まれ育った漁師の西居英治さん(77)は安■した表情で語る。沖島は島民世帯の大半が漁業で生計を立てており、沖島漁業協同組合の漁獲量は琵琶湖全体の漁獲量の半分強を占める。漁師の長男として生まれ育った西居さんは中学卒業後すぐに「当たり前のように」漁師の世界に足を踏み入れた。「シジミ漁が盛んでそれだけで多く稼げる良い時代でした」と振り返る。だが、1960年代から70年代にかけて農薬やPCBによる湖の汚染が進み、シジミ漁は大きな打撃を受けた。 現在は水質が改善され、春には特産の珍味「鮒ずし」の原料になるニゴロブナ、初夏はアユ、夏場はビワマスやウロリ降はスジエビやモロコといったように年間を通してさまざまな魚が穫れる。魚種によって漁法も異なるため、熟練した技術が求められる。例えば、6月の満月後に漁が始まるアユ漁に使われるのが刺し網。アユの成長度合いによって網目の大きさを少しずつ変えていき、潮の流れの変化を読みながら網の位置を変えていく。また、夫婦船(めおとぶね)といって、夫婦2人で船に乗り込んで漁をするのも沖島の漁の特徴だ。「一人でやるより格段に作業が効率的で、肉体的な負担も和らげられます」。 ただ最大の課題は後継者が育っていないことだ。漁師の息子たちが島を出て就職するようになったためで、かつて150人ほどいた組合員数は現在約70人にまで減り、組合員の平均年齢も70歳を超える。「以前と比べると漁獲量が減り、魚離れが進んで売れなくなった。だから値段も下がる。悪循環です」と同漁協の理事を務める北村重、10月以島民の大半が漁業で生計を立てている68歳の北村さんは沖島漁協の中では“若手”だ。奥様とともに夫婦船(めおとぶね)で漁を続ける。ICT化にも組合の先頭に立って取り組んでいる。24  北村重俊さん

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