自然災害と労務管理

2018年10月11日

9月14日に近畿地方を縦断した台風21号。私自身、暴風雨の中を徒歩で帰宅する羽目になり身の危険を感じました。今回は、自然災害が発生した際の休業手当の支払いと労災について取り上げます。

1 休業手当の支払い


労働基準法第26条によると使用者の責に帰すべき休業について使用者は、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないと定められています。
この「使用者の責に帰すべき事由」には自然災害などの不可抗力によるものは含まれません。

ここでいう不可抗力とは、

〇その原因が事業の外部より発生した事故であること

〇事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても、なお避けられない事故であること


の2つの要件を満たす必要があります。

例えば、従業員の多くが利用している交通機関がストップして多くの従業員が出社困難となり休業した場合は、不可抗力による休業とされ、労働基準法上の休業手当の支払い義務は生じない可能性があります


2 業務中に自然災害で被災した場合


暴風雨、水害、地震などの自然災害は、それ自体は業務と無関係な自然現象です。
それらに起因する災害は業務遂行中に発生したものであっても一般的には業務起因性がないので、業務外の災害として労災補償の対象となりません。

しかしながら、業務の性質や内容、作業条件・環境、事業場施設の状況から自然災害を被りやすい事情にある場合は違ってきます。
業務に伴う危険(又は事業主の支配下にあることに伴う危険)としての性質を帯びるため、自然災害に際して生じた災害も、業務に伴う危険があると見なされ、業務起因性が認められ、労災補償の対象になるとされています。

書いてあることが難しいので、かいつまんで言うと、例えば、柱とトタン屋根のみの囲いのない作業場で作業している際に作業場が倒壊して下敷きになって負傷した場合は労災補償の対象になります。

では、自然災害に備えて会社はどんなことができるのでしょうか。

〇水や非常食の備蓄、防災用具を購入し、非常時の従業員の安全確保に努める

〇緊急時にメールや電話等で従業員と連絡が取れる体制を整備する

〇自然災害時の勤務について、例えば、時差出勤や自宅待機、在宅勤務などの対策を事前に社内で規定し従業員に周知する


このような対策を全部講じるのはなかなか難しいかもしれません。しかしながら、昨今の自然災害の被害状況や発生頻度を鑑みて、従業員の安全と安心のためにも検討の上、実践できる部分から取り組んでいくことが従業員と会社を守ることにつながると考えております。
    
(社会保険労務士法人ティグレ 代表社員 新里順一)


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